読まれないブログを書くこと

 この度、グーグルアドセンスに合格した。
 この申請に付随して何となく考えたことを書き記しておく。

 私がこのブログを始めたのも、更にはアドセンスの審査を申し込んだのも、きっかけは単純で、ツイッターでそれらを実践している人をよく目にしていたからだ。何となく面白そうだから自分もやってみようと思っただけで、そこに特に深淵な計画があった訳ではない。

 ツイッターではセミリタイアとかFIREとかあるいは副業とかそういう内容に関心のある人と主に繋がっているから、その中でブログをやっている人も、その多くが多少なりとマネタイズを意識していて、だからこそアドセンスもよく利用されている。

 そして当然ながらそういう人の多くが、ブログを開設運営するにあたってはいかに面白い記事を書いてたくさんの人に読んでもらうかをしっかりと考えている。
 記事にできる自分の強みは何か。
 人に関心を持たれやすい内容は何か。
 目を引くタイトルの付け方は。
 読みやすい文章の長さは、構成は、写真やイラストの使い方はどういうものか。

 そして他人に読んでもらおうと思えば、一番重要なことは、他人にとって有益な情報を提供することであるらしい。それはそうだ。自分が読む側であるところを想像してみればすぐに分かる。私自身も含めて多くの人は、何か疑問を解決したい時にネットで検索する。そして自分の疑問に答えをくれそうな記事に目を通す。

 実際、今回のブログ開設作業においてワードプレスの操作やアドセンスの申請で不明点があった時、私もネットで解決方法を検索して様々なサイトに何度も助けられた。これらの記事も誰かが時間をかけて書いてくれたものなのだな、と、自分がブログに手を付けたからこそ分かるその価値をしみじみと認識している。

 翻って自分のこのブログはどうだろうかと考えるに、そういう意味では全く他人の役に立ちそうにないなと思う。上の内容を知れば知るほどそう思うようになった。

 ブログ開設時にこのブログの方針を書いたが(それを書いたのは一年以上前だ)、それがいかに上の内容と逆方向を目指しているかが今になってわかる。

 それでも私自身は、問題解決のためにネットを利用することももちろんあるが、読んで面白いと思うのは専ら人がその頭の中で考えていることの一端を文章として表現しているような記事だし、私自身も書くならそのような記事を書きたいと思う。

 また、他人に対して何かを教えようとする態度が苦手だ。単に「自分はこう思った」と述べるに留めたいという強い欲求がある。自分の中の自己顕示欲について常に葛藤しているし、無意識にでも他人にマウントを取りたくないし、自分の考えを押し付ける結果になることは避けたいし、何より他人に教えられるほど何かについて網羅的に理解していない。

 ブログタイトルに『セミリタイア』と銘打っているからにはセミリタイアについてのあれこれを書けばいいのかもしれないけど、少なくとも私が書きたいことは「セミリタイアするためのキャリアプランはこれだ」とか「セミリタイア実現のための資産運用術」とかそういう他人に教えるための記事ではなくて、「セミリタイアする時にこんなことを考えていた」とか「セミリタイア後はこんな生活をしている」「こういうことを考えている」とか、そういう個人的体験だ。

 そして繰り返しになるが、それらが他人にとって相対的に関心を持たれにくい記事であるということを認識している。それに文章はやたら長いし、イラストや写真を挿入することもないし、いざ他人の目線を意識すれば本当に読まれにくいブログになっているなと自分でも思う。

 今回、アドセンスの申請をするにあたって、その前提としてより他人の目を引くブログを書くことが求められていることを理解するにつけ、その辺りに齟齬が生じていることをより強く認識することになった。

 自分にとっては価値があるが他人の関心を得にくい内容を書くか。
 自分にとって書きたくない内容だが他人に読まれやすいであろう記事を書くか。

 このふたつは、どちらが正解というものでもないと思う。

 もちろん、アドセンスの本来の目的を考えればPVの増える後者を選ぶべきなのだろうが、収益にこだわらないのなら端的に言えば自分にとって心理的報酬の高い方を選べばよいと思う。だから他の人からの反応こそが喜びと思う人ならやっぱり後者を選ぶだろうし、逆に、とにかく書くこと自体を楽しみたいのであれば自ずと前者になる。

 自分はどうだろうかと考えれば、上に書いたように、一年以上前にこのブログの方針を書いた時に自然とその答えも書いていた。ブログに対する考え方はその頃とあまり変わってないから、もうしばらくはPVよりも自分の書きたいことを優先しようと思う。

 だったらそもそも何故アドセンスを申請したんだ、とは自分自身でも思ったことだが、冒頭に書いたように、当初は何となく面白そうだから人の真似をしてみたというのが理由だった。
 だから逆に、不合格なら不合格でそれも納得できるし、それでいいとも思うようになっていた。

 と、アドセンスの申請をした後にずっとこういうことを考えていたのだけど、この度、晴れて合格という返事を得た。ずっと上のようなことを考えていたので、いざ結果が出れば何だか不思議な気持ちになった。そして他人の評価を気にしない方向を選びながらも、やっぱりどこか少しほっとしたのも事実だ。

 しかし元々、人とは驚くほど多様なもので、またその多様性が認められるべきという世の風潮もある中で、グーグルという全世界をまたにかけるような企業ともなれば、私が知っているような狭い世界ではなくて、色んな国の色んな人が色んな内容の記事を書いてネットに上げているのを知っているのだろう。あるいは単にピンからキリまで広告窓口を広げておく方針なのかもしれないけど。内情とか判定基準についてはよく分からない。

 ただ、考えてみればこのブログの主題であるセミリタイア自体、他人の目や世間の評価を気にせずにただ自分の個人的な充足だけを追求するという姿勢と親和性が高いものなのだし、であればこのブログも、しばらくは自分の思うように書いていけばよいのかなと思う。

 グーグルさんからも、これでいいと言ってもらったような気になっている。

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