コロナと猫と整形外科とプロテイン

1.コロナと筋力低下

 2020年2月、私がセミリタイアっぽい生活を始めたのと、新型コロナウィルスで社会が止まってしまったのはほぼ同時期だった。

 幸い、コロナ禍における外出抑制や社交機会の減少による精神的ダメージは、引きこもり好きの私には皆無だった。
 一方で、身体面ではやはり大きなダメージを受けていたようだ。

 セミリタイアにより仕事関連での外出が激減したのに加え、折からの自粛要請で、習い事の教室や学校もジムなども軒並み休業となった。それまでは毎日外出して一万歩前後歩き、積極的に階段を昇り、時に立ち仕事もしていたのに、一転して一日中家に引きこもることになり、殆ど動かなくなった。

 ジムが休業していた約2か月の間に体重が3・4kg減ったのだけど、どう考えても脂肪ではなく筋肉が衰えたに違いなかった。家の中で立位でいるのは家事をしている時くらいだし、それ以外の時間は本を読んだりPCに向かったりしながらずっと座っているか、時には寝転んだりしていたから。

 ジムが営業を再開した後、日常生活では特に支障を感じなかった運動機能の衰えをはっきりと実感することになった。
 筋トレで扱える負荷は前よりも顕著に軽くなっており、終了後は主に背中に疲労が強く出た。ストレッチで前屈や側屈をする時にも、前のようにスムーズに体勢を移行できなくなっていた。

 社会も少しずつ平常運転に戻っていき、私自身も習い事や仕事、交際等で外出するようにはなっていた。段々と予定の増えてきた日々を過ごしながら、少しずつでいいから、何とか前くらいの筋力は取り戻したいと思っていた。

 それでも依然として、週に数日は家から出ない日があった。
 これはコロナのせいではなく、私の生活の構成要素から導かれる活動量だった。
 つまり今後、外に勤めに出るとかアウトドアな趣味を持つとかしない限りは、私の日常の活動量はこれ以上増える見込みがない。私は自営業で、家仕事がメインだし、家にいればどうしても座っている時間が長くなる。仕事を変える予定もないし、毎日外出するなんて考えただけでストレスフルだと思う。

 基本的な生活強度が上がらない限り、週に1・2回筋トレをしても前のような筋力は戻らないのではないか、と考えるようになった。

(その辺の葛藤はこの記事に書いた↓)

 徐々に筋トレのモチベーションが低下し、逆にこの頃からヨガに興味を持つようになった。ヨガは筋トレ要素とストレッチ要素が含まれているし、自分の身ひとつで行う。上の記事にも書いたように、日常生活と乖離した負荷を扱うよりも、自重で体を使う方がその時の自分に合っているような気がした。

2.猫

 2021年の夏、念願だった猫を飼い始めた。かわいい仔猫を2匹、保護主さんから引き取って一緒に生活するようになった。

 私は毎日、自宅と仕事場を往復する生活で、猫は移動を嫌うから本来ならどちらかでのみ飼うべきだったのかもしれないけれど、保護主さんとも相談のうえ、猫も連れて一緒に移動することにした。その方が一緒にいられる時間は長い。それに仔猫の間はあまり長時間目を離すべきではないし、私も日中は一緒に遊び、夜は一緒に寝たい。
 そういう訳で、大きめの鞄タイプのペットキャリーを購入し、2匹をそこに入れて肩に掛け、毎朝毎晩、自宅と仕事場の間を移動することになった。最初の数日は不安そうにしていた猫たちも、すぐに慣れたようだった。

 うちに来た当初、猫の体重は2匹合わせても2.5kgもなかった。
 そこから少しずつ、でも着実に猫たちは大きくなっていった。
 成長する木を毎日飛び越えながら忍者が跳躍力を鍛える話があるけど、あんな風に、猫という負荷が毎日少しずつ重くなることで、この移動が私にとって筋トレのような効果を持つのではないか、と少し期待したりした。
 ところが残念ながら、私の筋肉の成長よりも猫の成長の方が早かった。
 数か月すると、猫は2匹合わせて10kgを超えた。一方の私は相変わらず、週に数日は外出し、週に数日は終日家にいて座り続ける日々。一日に数分だけ猫を担いで歩いたところで、焼け石に水だった。

 2021年の終わり頃から、毎日猫の入ったバッグを右肩に担いで歩いているせいで、たまに左の臀筋上部に時折「ぴきっ」と痛みが走るようになった。
 当初は単発の痛みだったので気にしていなかったのだけど、ある日、獣医に連れていく道中で30分ほど担いだまま歩き回ったところ痛みがひどくなり、それからは左の臀筋上部に常に痛みを感じるようになった。(その後、肩に担いで歩くのはやめた。)

 年が明けて2022年になっても、状態は変わらなかった。
 ずっと痛い訳ではなく、運動して体が温まると消える。しかし終わった後は疲労も加算されて再び痛む。痛みも日によって強かったり弱かったりした。
 前にテニス肘になった時には治癒に数か月かかったので、今回もそれくらいかかるのだろうと、数か月は様子見を続けた。

 困ったのは、痛む箇所をかばったり上手く動かせなかったりするせいで、徐々に他の箇所に負荷がかかり痛み出したことだった。
 大腿部や背中が痛くなることもあった。痛いのでトレーニングをするにも動きにくい。長時間座りっぱなしだと確実に痛くなるので仕事もしにくい。ならばとスタンディングデスクも導入してみたけど、立ち続けても同様に痛みが出たので、しばらくしてやめた。

 今考えると、コロナ前の筋力があれば、おそらく猫を2匹担いでも痛くなることはなかったのかもしれない。分からないけど。
 筋力が前より衰えているのは自覚しているし、前の筋力に戻れば改善するのかもしれないけど、そのための筋トレをしようとしても痛くてできない。
 これは自力ではどうしようもないのではないか、と徐々に気が重くなっていった。

3.整形外科

 これは明らかにQOLを下げているなと思ったため、ついに医療の手を借りることにした。何科なのか、あるいは接骨院なのか整骨院なのかも分からなかったけど、とりあえず整形外科を受診してみた。

 最初に医師の問診があり、それから患部周辺のレントゲンを撮った。
 筋肉の傷みの他に「骨と骨の間が狭くなっているのも痛みの要因のひとつだろう」と言われた。てっきり筋肉の問題だと思っていたので予想外だったが、それなら自然治癒を待っても無駄だった訳だ、と納得した。

 その後、リハビリが有効だろうということで別室に移動し、(おそらく)柔道整復師(※)の施術を受けた。カルテを見た整復師さんが「まずは骨の間隔を戻していきますね」と言った。
 驚いたのは、整復師さんが少し触っただけで患部の痛みがすーっと引いていったことだ。決して強く押したり揉んだりはしていない。「ねえねえ」と友達の肩をたたいたり、寒い時に手のひらで両腕をこすったりするくらいのインパクトしかなかったのに、覿面に痛みが消えた。
 その時、やはり専門家の力を借りることはとても大切だ、と実感した。お試しで受診しただけだったが、毎週リハビリに通うことに決めた。
 せっかく痛みが消えたのに、その日の帰り道に買い物をしたら(牛乳とかキャベツとか重いものを買ってしまったせいで)また痛みがぶり返してきた。来週は買い物はやめようと思った。

 それから今に至るまで、毎週1回、リハビリを受けている。
 骨の間隔に言及されたのは初日だけで、あとは痛い場所をかばったり座り仕事だったり、あるいは動き方の癖があったりして特定の箇所に負荷がかかり、それによって痛みが生じているのだろうということを言われ、痛みのある個所そのものではなく、脚とか股関節の可動域や筋肉の状態の確認・調整をしてもらっている。

(※このブログを書いた後に、実際にはどうなんだろうと思いクリニックのスタッフ紹介パネルを確認してみると、「療法士」とだけ書いてあった。理学療法士だろうか。リハビリと言えば理学療法士だというイメージがあるけど、何となく電気治療とかしてそうで、体を整えるのは整復師さんかと勝手に思っていた)

4.家トレ

 同時期の2022年4月、私はオンラインフィットネスを開始した。
 やはり私の生活では運動量が不足しているのが明らかで、また徐々に増えている体重も全く減る気配がない。もう少し脂肪を減らしたい。食事は自炊で野菜や果物はたっぷり食べているし、睡眠時間も充分に確保できており、飲酒も喫煙もしない現状、残る選択肢は運動くらいだと思った。
 といって「毎日ジョギング」といった外出を伴う活動はそれだけで気が重くなり、始める前から続かないことが分かっているし、ジムに通う回数を増やすのも同様である。
 そんな時にオンラインフィットネスのことを知った。きっとコロナ禍がなければ存在していなかったサービスだ。これならできるかもしれないと思い、家の中で毎日運動することにした。

(ちなみに、その前にリングフィットアドベンチャーも購入したことがあったが、残念ながら継続には至らなかった。)

 果たして、オンラインフィットネスは私に合っていた。
 もともとエクササイズ自体は好きだ。ジムだって行くのが嫌なだけで、行ってしまえば楽しい。
 エアロビクスのプログラムはないのでボクササイズを受講しているが、それなりに汗もかくし、体を動かす楽しさは充分に味わうことができる。家の中でできるので大した努力も要しない。事前予約が必要なのも継続に一役買っている。

 そういう訳で、4月頭に開始して以来、このブログを書いている今現在まで、ほぼ毎日家トレを実践できている。

 しかし、続いたら続いたで、今度は「どれくらいの間隔で休息日を設けるか」を考えるようになった。

 週に2回のジム通いも続けているが、ジムに行けば2・3時間はみっちり運動する。
 それに対して、家トレはプログラムによるが1回30分から60分だ。大した運動量ではない気がする。
 筋トレなら回復のためのインターバルは必須だが、今やっているのは主に有酸素運動だし、ネットで検索すると「アクティブレスト」といった内容が目につくし、休むべきかどうかが分からない。もしかしたらさぼりたい言い訳にしているのかもしれないし、一回休むとそのまま継続が絶たれてしまう可能性もないとは言えない。それに朝起きてから運動を始めるまでは「疲れた、だるい」と思っていても、いざ動いてしまえば体が軽くなるのももう知っている。

 そうやって、休むのが怖い気持ちもあり、何だかんだとほぼ毎日家トレを続けてきていた。

5.プロテイン

 少し前のある日、その日はジムに行く日(土曜日)で、割と負荷の高い筋トレ及びエアロビクスを合計3時間くらいこなし、がっつりと疲労した。
 翌日には筋肉痛が出たが、その日も家トレをした。筋トレなら筋肉痛があれば休むが、有酸素運動の場合はどうなのだろうか、その辺がよく分からない。
 その次の日には筋肉痛は消失したが筋の強張りが残り、そのまま数日が過ぎた。ストレッチはジムに行くたびに前以上に丁寧にしているが、にもかかわらず左脚の側面が全体的に硬くなっていて痛い。猫キャリーで傷めた臀部にも再び痛みが生じていた。

 その強張りのままリハビリに行き、「今日は痛いです」と伝えて施術を受けた。多少は軽減していたが、臀部から骨盤周辺、大腿部、ふくらはぎ辺りまでが変わらず痛い。
 それまで改善傾向だったのに悪化しているのが不可解だったのか、整復師さんが色々と考えてくれようとするので、「運動の疲労が残っている」と伝え、運動後のストレッチについて質問した。

 その日は月に1回の医師の問診日だったので、疑問点について質問してみることにした。
 症状の改善のためには運動は続けるべきだと言われていたのだけど、前々から疑問だったので、
「この場合の運動って筋トレですか、それか有酸素運動でもいいですか」と聞くと、
「どっちでもOK。どちらでも有効」と返ってきた。
 ちょうど良い機会なので休息日についても聞いてみると、「休息は大事だね」と。
「筋トレなら分かるんですけど、有酸素運動でもですか」
「どちらでも。まあ運動は週5が上限かな」

 そういう訳で、医師がそう言うのであればと、きちんと休息日を設けることにした。
 ただ、毎日家トレと言っても短い日は30分だけで、それ以外は相変わらず座りっぱなしだしという点も考慮し、まずは週1回、土曜日にジムでがっつり疲れた日の翌日だけ休むところから始めてみようかな、と思った。

 あいにく、その日のリハビリでは痛みは消失しなかった。
 翌日以降も強張りや痛みを感じつつ、次の週の土曜日が来た。プログラムに参加する直前まで痛みがあり、そのせいで充分に動けないくらいだった。ただし動いているうちに体が温まり、痛みが少し軽減した。(でも運動後には疲労と共に再び痛みが生じることももう知っていた。)

 筋力は、別に重いものを持ち上げたりするためだけのものなのではなく、可動域を充分に確保して大きく動いたり、スムーズに動いたりするためにも大切なのだと思う。
 力強さだけでなく、しなやかさ、柔らかさ、そういうものもやはり筋力なのだと、コロナで筋力を失ってから実感するようになっていた。

 そんなことを何となく考え続けた結果なのか分からないけれど、この日、私はふとした思い付きで、プロテインをシェイカーに入れてジムに持参することにした。
 筋トレに対するモチベーションを失うとともにプロテイン摂取もやめていたのだけど、再び飲んでもいいかと何となく思ったのだ。
 ジムに行き、まず初めに筋トレ系のプログラムに入り、終わったところで持参したプロテインを飲んだ。その後、使わなかった部位を自主トレして、エアロビクスのプログラムに入った。

 いつもなら、帰宅する頃には疲労感と共に痛みがぶり返しているのが常だ。

 なのにこの日は寝るまで全く痛みを感じなかった。
 更に、翌日になっても全然痛くない。

 まだ仮説段階ではあるけど、これはやはりプロテインのおかげなのではないか、と思っている。
 プロテインを飲むまでは、むしろ前よりひどいくらいの痛みだったのに、それがすっかりなくなっているのだから。

 私は専らホットクックという調理家電を使って自炊しているのだけど、これを使うと野菜たっぷりの料理を作りたくなり、がっつり主菜というメニューが自然と遠のく。
 材料の中にたんぱく質は入っているが、メインはどちらかと言えば野菜だ。肉や魚を焼くといった調理方法はホットクックは得意ではない。

 日常生活を送るだけなら足りていたたんぱく質量も、毎日運動するとなると不足していたのかもしれないな、と思う。だから筋肉が充分に回復できなかったりして強張りが続いたりしたのだろうか。

 逆に言えば、プロテインを摂取することで、今後はこれまで以上の筋力アップも可能になるのだろうか?

 5・6年前に筋トレを始めてからずっと色々と勉強し、考え、実践したりしてきた結果、最終的に「私は体質及び生活習慣的に筋力向上は甚だ困難なのだ」くらいの諦めの境地に到達しそうになっていたのだけど、もしかしたら(生活習慣をがらっと変えなくても)もう少しは向上できる余地が残っているのかもしれない。
 この先プロテインがどの程度効力を発揮するのか分からないが、とりあえずしばらくは飲み続けてみようと思う。


 久し振りに痛みがなく、また将来への希望すら見えてきた高揚感により、長々とブログを書いてしまった。
 今後の体調に注視したい。

雑記

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