そんな機能はいらないのに

 少し気力が回復してきた。

 ここしばらくは、嫌な気分から逃れるためにずっとフィクションの世界に逃げていた。本ばかり読んでいた。

 読み終わった後、こんなことをしていていいのかというお決まりの罪悪感が出てきそうになって、理屈で考えたらそんな風に思う必要はないのに何故まだ振り払えないのかなと思う。嫌な気分になるので、また別の本に逃げる。

 本を読んでいない時、あるいは読んでいる時でも、最近は頻繁に過去の出来事が思い出される。普段なら忘れているようなつまらないこと。大体が自分の至らなさを再認識させられるような体験だ。多分、何か明確にやらないといけないこと、考えないといけないことがなくて頭の中が暇だからだろう。

 放っておけば過去の嫌な出来事ばかり思い出してしまうというのは、人間の脳が本来的にそういう機能を備えていると何かで読んだのだけど、嫌な機能だと思う。

 過去の自分を現在の自分の視点で見返して、欠点ばかりが目に付く。色んな人に不愉快な思いをさせて、色んな人に嫌われてきたのだろうなと思う。(これは自分としてはマイナス思考ではなくて客観的な評価だと思っている。)そして当時の自分はそのことにあまり気付いていなかった。少なくとも悪意を持って行動していた訳ではないし、自分なりの考えに基づいて動いていた。ただ視野が狭かったり自分のことしか見えていなかったりした。今思い返してそう気付くということは、その頃よりは視野が拡がったりしているのだろうか。

 今でも多分視野は狭い。おそらく他の人よりも狭いんじゃないかと思う。視野が狭いということは見える範囲が狭くて、見えないものは自分にとっては存在しないのと同じだから、どうしても上手く行動することができない。このことに気付いてから、自分は頭が悪かったんだなと思うようになった。

 とりあえず、視野の外は見えないけれど、自分に見えない部分があるのだということを忘れないようにしながら行動するしかない。