彼の人生から学びたい

 嫌なことがあってまた一時的に気力が落ちた。

 気力が落ちると、過去の嫌なことが蘇る。朝目が覚めた瞬間に、思い出したくない過去を頭の中で再現している。それでしばらく自己嫌悪と戦いながら時間を無駄にする。普段忘れているような小さなことまで、どこからか発掘してきて自分を苦しめる。色んな人に嫌な思いをさせて、色んな見苦しいことをしてきたと思う。よく平気でこうしていられるなと思い、世の中に人が溢れていて過去の知己にそれほど会わなくて済むことや、人がそれなりの忘却力を備えていて他人に無関心であることに感謝する。

 そして、ある小説の冒頭の一文を思い出した。

 恥の多い人生を送ってきました。

 その一文は自分の気持ちにぴったりだと思い、もしかしたら昔理解できなかったあの小説の価値を今こそ味わえるかもしれないと思った。

 実家の本棚にはまだあるはずだけど、よく考えたらキンドルでも著作権切れの無料版が手に入るのではないかと思い、検索したらあったので、ダウンロードした。

 はしがきと第一章みたいな部分を読んだ。正しくは「人生」ではなく「生涯」だった。恥の多い生涯を送ってきました。

 書いてあることは、私が読みたいと思っていたこととは違った。それが彼の恥の多い人生なのだろうとは思ったが、今は他人の人生に共感している余裕がないので、読むのを途中でやめた。

 昔、歴史的名著の良さがよく分からないことが多い、という話を友人にした時に、『太宰治は、ツッコミ待ちっていう感じでまだ何となく分かる』とその友人が話していたので、そういう見方をするのか、と感心したことがある。

 最後まで読めば、彼なりの恥の多い人生をもう少し把握できるのだろうけど、それはもう少し気力が回復して時間に余裕がある時にしようと思う。

雑記

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