私の株式投資遍歴(2) リスクと適性

分散投資は大事と言われるが

 よく「将棋の勝敗は実力が10割、麻雀は運と実力が4:6(数字は適当)」と言われるけど、株式投資も麻雀と同じようなところがあると経験上思っている。一回だけではなく何度もやれば、(私のような)素人でも負け続けることはない。
 ちなみに、これは一銘柄に大きく投資するのではなく色んな銘柄に分散投資している場合だ。分散投資すれば、毎日どれかが上がったり下がったりしている。全部が値上がることは滅多にないし、逆に全銘柄が一斉に値下がることも殆どない(リーマンショック級の何かがあった時でも、1銘柄ぐらいは何故か値上がってたりする)。
 私は株式投資が楽しかったので、色んな銘柄を買ってみたくて、最低単位数で複数銘柄を買うのが常だった。だから2000年頃から続く長い不景気下で今より運用状況がずっと悪かった時でも、「元本が半分になって投資が嫌になった」という類の絶望を味わったことがない。
 個別の銘柄で「失敗したな」と思ったことは何度もあるが、同時に別の銘柄が伸びているので、まあまた次があるだろうと思えた。株式投資のリスクとは私にとってはそんな感じで、正直に言えばあまりハイリスクとは思っていなかった(前回記事FP部分参照)。
 ただ投資信託とどちらが効率が良いかと言えばよく分からない。というより比較できるものではないのだろう、期間設定にも寄るし、その人のリスク許容度の違いにも寄る。「一般的にどちらが良いか」という問いに正解はなくて、「自分にとってどちらが良いか」を考えるべきなのだと思う。
 私にとってはどちらが良いのかと考えれば、楽しいのは株式の方だが、この考え方は一般的には推奨されない。そしてセミリタイアした今はリスク許容度が下がっているし、数年前から海外ETFや投資信託も保有しているのが現状だ。それらが本当に株式より安全なのかどうかも分からないけど、少なくとも特に楽しくないから放置するのは簡単だとは言える。
 今現在、追加で買うとしたら投資信託かもしれないが、といって保有株式を全て手放すこともまだないと思う。

向き不向き

 若かりし頃の私は、株式投資を通じて色んなことを学べると思っていたし、学ぶのが楽しかった。よく株に興味を持つことで経済に興味が出てくると言われるように、私も一時期は新聞を読んだりしたり、色んな本を買って読んだり積んだりした。
 個別銘柄に興味を持って、ある業界に興味を持って、国内情勢や国外情勢に興味を持って、政治や経済に興味を持って、様々な経営者に興味を持って、たくさんのことを勉強しようとした。また別のアプローチとして様々な投資理論、チャート分析とかテクニカル分析、銘柄分析、四季報の使い方、バフェットの考え方、その他いろんな投資家の投資手法など、目につく本は大体読んだ(一部は積んだ)。まあ、20代ってそんな年代だよね、という感じだ。
 ただ、当たり前だけど、本を読むだけではどんな手法も身に付かなくて、本当に自分のものにしようと思えばインプットの後に実践が必須となる。
 例えば、私はある時マインドマップに興味を持って何冊か本を読んだことがある。あれもただ読むだけではなくて、読んだ後に実際に自分の手を動かして何度も書いてみて初めて身に付く類のものだ。
 株式投資の手法も多くはそうだと思う。四季報を読みこなして銘柄を見つけようと思ったら何冊も買い続けて細かく読み比べないといけないし、テクニカル分析やチャート分析だって、あるいはファンダメンタル分析だって、自分なりの仮説を立ててそれに沿って売買して後から検証するような一連の作業が必要になる。
 でも私はあんまりそういうことをしなかった。株式投資に対する姿勢がミーハーだったと言ってしまえばそれまでだが、実際問題、私にとっては有限の時間を使うとしたらもっと優先順位の高いことがあったので、片手間にならざるを得なかった。
 何かといえば、もちろん仕事関連の勉強や仕事そのものだ。そしてそれらは株式投資以上に私に経済力(稼得能力)をもたらしたので、これはこれで正解だったと言えるだろう。

最終的には適当

 以上の経緯を経て、私は株式投資歴が長くなればなるほど、ほとんど株式関連の勉強や情報収集に時間を遣わなくなっていった。ではどうやって株式を売買していたかというと、その時々の自分なりの判断で適当に買っていた。
 テクニカル分析だって、自分でしなくても一般的な指標は証券口座サイトで表示されている。四季報情報もそうだ(更新されるので期間比較はできないけど)。だからそういうものを見て適当に買う。私生活でたまたま興味を持った会社の株式が上場されていればそれを買ったりもする。
 なお記述が重複するが、こうやって適当に買っても通算の運用損益は大きくプラスだし、それはアベノミクス以後だけではなくてそれ以前の不景気時代を含んでいる。

仕事で稼ぐことのメリット

 上で「株式投資より仕事に時間を遣ったのは正解」と書いたのは、次のような効果があったからだ。

1.投資資金の準備
 仕事に対して相当の時間と労力を費やすことで、私はより多くの余裕資金を手に入れた。仕事に邁進していればお金もあまり使わず、結果として預金残高が増え、それを無理のない範囲で株式投資に回していた。

2.投資の継続
 いくら株が買いたいと思っていても、もともと余裕資金以外ではやろうと思わなかったので、それも私が株式投資を長く続けられた要因のひとつでもあると思う。(『投資は余裕資金で』とは口を酸っぱくして言われていることだ。)
 売却損が生じても、あくまで余裕資金が少し減っただけで、本業を頑張っていれば「また稼げばいい」と思えたし、だからリーマンショックや同時多発テロなどの急激な株価下落時を含め、損失で落ち込んだ記憶があまりない。株式投資をやめようと思ったこともない。

3.長期保有
 最初の頃はちょこちょこ売買してしまっていたが、仕事が忙しくなればなるほど、証券口座を見ることが少なくなっていった。
 株式投資はあまり短期間で売買するよりも購入後しばらくは寝かせるくらいで良い(投資信託よりは定期的な確認検証が必要だが)と思うが、特に意識しなくてもそうなっていった。

4.株式投資ではない投資
 社会人になって数年は被雇用者として働き、しばらくして徐々に自営業へと切り替えていったが、その間私はずっと一貫して勉強し続けていた。(上に書いたように、株式投資の勉強時間を削って仕事に関する勉強をしていた。)
 これを投資として考えるなら、金融資産ではなく自分自身という資産への投資と言えるし、自営業への転換も適正なリスクを取ったと言える。(ちなみに自営業が必ずしもハイリスクとは個人的には思っていない。)
 投資の後には通常、回収があるべきだけど、私は株式投資があまり上手ではなかったので、株式に投資するよりも自分自身に投資した方がより大きな果実を得ることができた。そして邪道ながら楽しむための株式投資を続けることができた。

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